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2021.11.25
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iEVO2021ライブセッション・レポート

iEVO2021ライブセッション・レポート
iEVO2021ライブセッション・レポート

「2025年の崖待ったなし!『アフターコロナ』のDXを考える」というテーマの下、デジタルイベント「iEVO2021」が2021年10月19日から29日までの10日間にわたって開催されました。このイベントにおける3日間のライブセッション(2021年10月19日~21日)を視聴して、ここから見えてきたDX推進のポイントおよびITシステム(特にIBM iを中心としたシステム)の将来的な展望についてレポートします(*1)。

なお、このライブセッション動画は、現在期間限定でアーカイブ公開されております。
当記事と一緒にアーカイブもお楽しみください。
https://www.iguazu-sol.jp/ievo2021_archive

DX(デジタル変革)の真の目的

講演を視聴して最も印象的だったのは、多くの講演者が異口同音に「DXは単なるデジタル化やレガシーシステムの刷新ではなく、全社的に取り組むべき企業変革である」ことを強調していたことです。

ご存知の通り、DXという言葉は2018年9月の経済産業省の「DXレポート」によって、「2025年の崖」という言葉と共に広く知られるようになりました。このレポートは、IDC Japanが発表したDX定義を参考に、IT技術を活用しながらビジネス環境変化に迅速に適応しつつ、競争優位を実現する企業文化・風土醸成のための変革の必要性を訴えたものでした(*2)。

しかし、DXに対する一般的な受け止め方は、「DX=レガシーシステム刷新」あるいは「現在競争優位性が確保できていればそれ以上のDXは不要」といった、木を見て森を見ない議論やDXの本質を見誤った解釈が多く見受けられましたし、未だに誤解をされたままの方もおられます。また、情報処理推進機構(IPA)の調査・分析の結果、2020年10月時点でDXへの取り組みをまったく行っていない、または不十分な企業が9割以上という実態も明らかになりました。

こうした現実を踏まえ、経済産業省は2020年12月に「DXレポート2」を、2021年8月に「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」を発表し、DXに対する正しい理解とDX推進の必要性を改めて訴えています。

アイ・ラーニング山本氏が講演「DX時代の変革とDXを推進する人財」にて指摘する様に、「DXは専門家のIT部門に任せておけばよい」ものではありませんし、そのようなDXの考え方や進め方は「DXを失敗に導く確かな道」だということは、DXの真の目的やそのスコープを理解していれば当然のこととして理解できるでしょう。

DXとコロナ禍

IDC森山氏が講演「「ネクストノーマル時代」に目指すべきDXとは」で語るところによると、コロナ禍による景気の落ち込みでIT投資は対前年比2.2%の減少となりましたが、2009年のリーマンショックの時の対前年比12.2%減に比べればその影響はそれ程大きくありませんでした。森山氏はその要因として、コロナ禍を経験したことで企業が、DXに取り組む企業が増加し、プロジェクトの維持あるいは拡大が図られたこと、および事業継続や回復力獲得に対する支出が増大したことを挙げており、2021年には公官庁や大企業の、2022年には中堅企業のIT投資が回復すると予想しています。

IBM伊藤氏は講演「いよいよ日本が変わる – 政府も社会も企業も私もDX Ready」において、コロナ前は企業がDXをリードしたが、コロナ禍でリモートワークを余儀なくされた結果、リモートワークとオフィスワークのハイブリッドが新たな日常となり、コロナ後は社会がDXを加速することになるだろうと言います。

森山氏もコロナの影響でDXが進展ないし優先順位が変わったとしつつ、コロナ前、コロナ禍中(現在)、コロナ後をそれぞれ「ビジネスレジリエンシー」「ビジネスレジリエンシー2.0」「デジタルレジリエンシー」の時代と位置づけ、コロナ後のDXはそれ以前のものとは違うという見方を示しています。「デジタルレジリエンシー」は、環境変化という危機に対応できるだけではなく、変化した環境をビジネス機会として活かすことができる力を付けることを目指します。そのための鍵となるのが、クラウド、ビッグデータ、AI、IoTなどのデジタルテクノロジーとデータの活用だといいます。

DXによって求められる変化

2020年12月に公開された経済産業省の「DXレポート2」では、ユーザーとベンダーの「共創」の必要性が強調されていますが、これはユーザーとベンダーの関係に大きな変化を求めるものです。これは従来よく見受けられた「ベンダー丸投げ」のスタイルを旧弊として葬り、ユーザーはベンダーを「DXを支援・伴走できるパートナー」として位置付けることを意味すると同時に、ベンダーも従来型の受け身の姿勢ではなく積極的な問題提起や提案能力が求められることになります。

また、アイ・ラーニング山本氏は「共創」に加えて組織を超えた「協奏」も目指すべきだと言います。「協奏」とは、トップ自らが社内の様々な組織をオーケストレーションし、企業文化と従業員の思考改革を推し進めることです。

「共創」または「協奏」のどちらにせよ、契約等の制度や慣習などを含め心理的にも大きな変革および変化が求められることになります。この点がDX推進成功の肝であり、また最も難しい部分であるように思われます。

DX人材の育成

先に述べたように、DXは変化への適応力を獲得するために、全社を挙げた変革をめざすものです。したがってDXを担う人材には、IT技術に止まらずビジネスに関わる様々な知識やスキルが求められます。DX時代のリーダーには、ビジネスを取り巻く環境やテクノロジーの変化に対応でき、過去の成功体験に囚われることなく、多様な意見や価値を受け入れて変革を行えるITリテラシーを持つことが求められるとIBM伊藤氏は言います。

ただ、そのような能力を1人の人間に期待するのは困難であり、アイディアを創出するイノベーター、テクノロジーでアイディアを具現化するDXデベロッパー、アイディアをビジネスに繋げるDXエグゼキューターで構成されるDX推進チームを作り、それぞれの役割に応じた能力を育成するのが現実的だとアイ・ラーニング山本氏は指摘します。そのために、自社なりのDX推進人材のあるべき姿を定義し、人材・目的別の教育プログラムを作成し、これをスパイラル的、アジャイル的に繰り返し実施して望む人材を組織的に養成すると同時に、経営層や管理職はこのチームを支えることが重要だと言います。

DXのためのIT基盤

「DX即ちITシステムの刷新」という認識が誤りであることは先に述べたとおりですが、ITシステムがDXを支える重要な構成要素の1つであることに間違いはありません。DXの基盤としてのITシステムにはどのようなものが求められるのでしょうか?

「摩擦レス」なハイブリッドクラウド

DXを推進すると言っても、すべてのプログラムやデータをクラウド上に置いて処理を行うことが必ずしも正解ではありません。セキュリティ、処理速度、データ転送速度、コスト等の観点から、現行プログラムをそのままオンプレミスで処理するのが適した業務と、クラウドで処理するのが適した業務が混在します。これが、現実解としていわゆるハイブリッドクラウドというシステム形態が求められる由縁です。

しかし、オンプレミスとクラウドという2つの異なる環境の運営管理には、アプリケーションに最適な環境選択の難しさ、管理者スキルや知識が追い付かないという問題、複数の環境でのデータがサイロ化するといった課題があるとIDC森山氏は言います。

この課題に対する回答が、IBMの提唱する「摩擦レス」なハイブリッドクラウドであるとIBM黒川氏は講演「当たり前が変わる。摩擦レスなハイブリッドクラウドで提供される企業価値」において主張します。「摩擦レス」とは、オンプレミスでもクラウドでも同じH/W、OS、ミドルウェアを使った一気通貫なアーキテクチャで、ハイブリッドクラウド内のどこでアプリケーション開発を行っても、システム内のあらゆる場所で利用でき、データに関しても同様に場所を選ばない利用法が可能な環境のことを指しています。また、運用に関しても同じ知識やスキルが活用できます。

自動化されたシステム運用

ITシステムの運用の効率化もDX推進に際して考慮すべき事項になるとServiceNow Japan飯沼氏は講演「コロナ禍におけるIT運用DXの実現」において指摘しました。つまり、DXによって会社運営の効率化、迅速化を図る上で、開発プロセスの短縮だけでなく、システムの運用効率も高めなければ目標を達成するのは難しいというわけです。

システム運用時の問題発生の検出、その原因や影響範囲の特定、対応策の実施といった一連の作業を人手ではなくシステムで自動的に行うことで、作業の迅速化、属人性や人的ミスの排除による運用品質の向上が期待できるといいます。また、ヘルプデスク機能をボットとの対話だけで完了させると同時に、ヘルプ要請事案の知識ベース化を図ることで無人での対応精度を上げ、24時間対応を可能にした事例なども紹介されていました。

自動運用に関しては、IBM伊藤氏もAIによるシステム運用の自動化はIBMのDX戦略の一部であると述べており、システムの開発、運用という両局面での自動化もDXを支えるITの重要な要素と言えそうです。

IBM iの未来とDX

次に焦点を絞り、IBM iユーザーにとってITシステムを中心としたDX推進をどのように捉えるべきかを考えてみたいと思います。

PowerプロセッサーとIBM iの将来性

DXがITシステムに対して求めることに、大量のデータを処理し、そこからビジネスの傾向・特徴を抽出して新しいビジネスに繋げるという役割があります。これを実現するためには、システムの処理能力の高さがITシステムの1つの必要条件になりますが、IBM iはそうした要求に十分に応えられる能力を有しています。

IBM菅田氏が講演「【Ask the Expert】最新Powerテクノロジー」で語るところによれば、2004年発表のPower5以降Powerプロセッサーの性能(CPW値換算)は3年毎に平均約1.4倍のスピードで向上してきているとのことです。その結果、今年9月に発表されたPower10ベースのサーバーは、Power5の約7倍と圧倒的な処理性能を発揮し、8ソケットのSAPベンチマークで世界新記録を達成(955,050APS/174,000ユーザー)しており、これは16ソケットのインテルベース・サーバーの約4倍の処理能力に相当します。

また、IBMスティーブ・ウィル氏が講演「IBM i and Hybrid Cloud ~ DX with IBM i Next Gen Application」において語る様に、IBM iのサポート計画は2030年過ぎまで公式に示されており、約3年毎の新バージョンの投入と年2回のテクノロジーリフレッシュによる新機能追加もコミットされているので、将来に渡って安心して使い続けることができます。このことは、IBM iが既に30年余りの長い寿命を保ってきたという実績からも裏付けられています。

さらに、菅田氏ならびにスティーブ・ウィル氏の言によれば、2022年春頃にはPower10をベースにしたスケールアウト・モデルも発表される予定とのことであり、より広範なIBM iユーザーが最新テクノロジーの恩恵に与れることでしょう。

IBM iとクラウド

IBM iのユーザーの関心事として、従来のアプリケーション・モダナイゼーションに加え、アプリケーションのクラウドへの移行という課題が近年目立つようになってきました。ここで重要なことは、「IBM iとクラウドの二者択一」ではなく「IBM iとクラウドの共存」つまりハイブリッドクラウドという発想だとスティーブ・ウィル氏は言います。

IBM iからクラウド上のサービスが活用できるように、あるいは逆にクラウドからIBM i上のアプリケーションが使えるように、アプリケーションのサービス化を中心にしてモダナイゼーションを行うのが、IBM iユーザーにとって最も迅速で現実的なDX化のアプローチになるということです。具体的には既存のプログラムをモジュール化/サービス化し、それらを組み合わせる形でプログラムを構築するというコーディングスタイルに移行することでこれを実現します。

各サービスはその処理に最も適したプログラミング言語で作成し、それらをRESTful APIまたはCALLインターフェースで利用できるようにすることで、機能の追加・修正が迅速に行えますし、自社に技術が無い場合でもクラウド上で必要なサービスを調達するという選択肢が生まれるとIBMスティーブ・ウィル氏は言います。

プライベートクラウド環境においては、Power Private Cloud with Dynamic Capacityを利用することによって、CPUやメモリーをプール内のサーバー間で共有することや、従量制容量クレジットを事前購入し、プール内の総起動リソースの超過分を一時的に分単位で増強することができるなど、柔軟な従量課金制を利用することができます。さらに、ハイブリッドクラウド環境全体での共通の従量課金体系を利用できるようにするという開発意向表明も出されており、今後さらに利用しやすい環境になるものと思われます。

また、Power Virtual Serverの利用もIBM iユーザーにとって導入しやすいクラウド環境だとIBM菅田氏は言います。申し込みを行うと即日IBM i環境が構築でき、1時間単位での課金体系で使用できるという手軽さに加え、稼働中にCPUコア数やメモリー容量を変更できるという柔軟性を備えています。既に、ハイブリッドクラウド・アプリケーションの開発機、災害対機、最新OSの検証などのための一時使用などで利用されている実績があるそうです。

ブラックボックス化対策とDXのためのモダナイゼーション

RPGⅡやRPGⅢ(またはRPG/400)で書かれた、いわゆる古典的なモノリシックプログラムもそのまま実行できるのがIBM iのコミットメントであり、利点の1つとされてきました。しかし、古いプログラムのままではDX時代に求められる迅速なプログラム機能の追加・変更に対応することは困難です。このようなプログラムは、モノリシックな構造であるためプログラムロジックを把握することが難しい上、コーディング面でもオープン系の言語を習得してきた若手プログラマーには、RPG特有のカラム固定プログラムは取っ付き難いこともあり、手を付けるのが躊躇されるいわゆるブラックボックスと化しているのが現状です。

ベル・データ安井氏は講演「ブラックボックスの解消からDXへ」において、自身のモダナイゼーション経験を踏まえて、古いRPGプログラムをJavaなどの言語で書き換えることが必ずしもDX化の最善の方策とは言えないと指摘します。なぜなら、オープン系の言語はバージョン間での互換性が保証されておらず、RPGのような後方互換性が担保できないため、将来的なバージョンアップ時に大きな更新作業を要する可能性があるからです。

その点、FF RPGを使えば後方互換性が保証される上、コーディングもオープン系言語にプログラマーならば短期間で習得することができると安井氏は言います。実際、2~3週間で使いこなせるようになった事例もあるそうです。こうしたことを考えると、FF RPGを使って古いRPGプログラムをモダナイズすることで、アプリケーションのブラックボックス化を防ぐことこそが、IBM iにおけるより優れたDX化の第1歩だと言えるでしょう。

また、FF RPG化を行う前に、現行プログラムの分析を実施することでプログラム構造の可視化を行う必要がありますが、ツール(例えばX-Analysisなど)を活用することで効率的にこの作業を行うことができると安井氏は言います。

まとめ

  • DXは単なるレガシーシステムの刷新ではなく、ビジネス変化に素早く適応できるよう、継続的に企業を変革し続ける文化を育む全社的な取り組みである。
  • IT技術はDXを下支えする重要な要素ではあるが、DX全体の1要素に過ぎない。
  • IT領域でのDXは、現時点ではハイブリッドクラウド環境およびアジャイル開発、DevOps、CI/CD等に代表される迅速な開発・改修体制の構築が現実的な最適解である。
  • IBM iはDXに求められる能力・機能を備えたプラットフォームであり、アプリケーションのモダナイゼーションを実施することでDXに適応でき、将来的にも安心して使い続けられる。
  • 古いRPGプログラムはFF RPGで書き換えるのが現実解としてベスト。その際、モジュール化/サービス化して構造を改めるべきである。その際に、各モジュール/サービスの構築には最も適した言語を使用する。

(*1)本レポートをまとめるに当たり、参考にしたセッションは以下のとおりです。

  • 「いよいよ日本が変わる-政府も社会も私もDX Ready」, 日本アイ・ビー・エム株式会社,伊藤 昇氏
  • 「「ネクストノーマル時代」に目指すべきDXとは」,IDC Japan株式会社,森山 正秋氏
  • 「当たり前が変わる。摩擦レスなハイブリッドクラウドで提供される企業価値」,日本アイ・ビー・エム株式会社,黒川 亮氏
  • 「【Ask the Expert】最新Powerテクノロジー」,日本アイ・ビー・エム株式会社,菅田 丈士氏
  • 「IBM i and Hybrid Cloud – DX with IBM i Next Gen Applications」,IBM Corporation, スティーブ・ウィル
  • 「コロナ禍におけるIT運用DXの実現」, ServiceNow Japan合同会社,飯沼 宏光氏
  • 「ブラックボックスの解消からDXへ」,ベル・データ株式会社,安井 賢克氏
  • 「DX時代の変革とDXを推進する人材」株式会社アイ・ラーニング, 山本 久氏

(*2)
参考:DXの定義
『企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内 部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデ ルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図る ことで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。』
(出典:「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」2018年9月, 経済産業省)

アーカイブ動画はこちら
https://www.iguazu-sol.jp/ievo2021_archive

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