企業のデータ保護のトレンドとバックアップの重要性
――最初に、企業のデータ活用を取り巻くトレンドについて教えてください。 岡田 世界中の企業のデータ保護について、米Dell EMC社が2016年と2018年末に調査*1を実施しています。それによれば、2016年当時、日本企業が保有していたデータ量は1.92ペタバイトでした。しかし、2018年末には8.88ペタバイトと、実に588%というスピードで増加しています。企業経営におけるデータの価値も、飛躍的に高まっているのです。 そうした中で、日本企業の66%がシステム障害を経験しており、一般的な手法やソリューションでは復旧できない深刻な障害を経験した企業は、2016年の7%から2018年末の26%へと大きく増加しています。高度化するサイバー攻撃により、日本企業の25%がデータロスを経験し、その平均損失額は、ダウンタイムで30万6618ドル、データロスで26万4474ドルとなっています。データ保護への対策は、待ったなしの状況にあると言えるでしょう。
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IBM i のバックアップ手法と設計思想
──IBM i のハードウエア障害に対する考え方を教えてください。 須藤 IBM iでは、ハードウエアが全損した場合でも、事前のフルバックアップがあれば、マイクロコード、IBM i OS、アプリケーション・プログラム、ユーザーデータを含む全資産を復旧できる場合があります。 ── 一方でIBM i の設計思想の特徴を教えてください。 須藤 IBM i ではハードウエアおよびマイクロコードとIBM i OSとの間に、TIMI(Technology Independent Machine Interface)と呼ばれる仮想マシンインターフェースを配置しています。 この設計によりリストア時、仮に新しいハードウエアがすでに最新のテクノロジーに移行していたとしても、IBM が提供するアプリケーションは自動的に新しいハードウエアで実行しうる形態に変換され、IBM i OS 上のソフトウエア資産は最新のハードウエアでも利用できます。 ──IBM i のデータ保護の方法を教えてください。 須藤 IBM i OS の標準機能として、データのバックアップ・リストアの機能を提供しています。 マイクロコード、IBM i OS、システムライブラリ、ユーザーライブラリー、ディレクトリーごとにバックアップ・リストア用のCLコマンドが存在します。用途に応じてこれらを活用することで、効率のよいデータ保護を可能にしています。また、CLコマンドに対応したSAVEメニューも提供されており、操作もわかりやすくなっています。 ──IBM i のバックアップに利用されている媒体としては、どのようなものがありましたか? 須藤 かつてのOS/400 からIBM i へ進化する過程では、1/2カートリッジ、1/4 カートリッジ、DAT、8mmなど、様々な規格のテープ装置が登場しました。現在一般的に使用されているのは、LTOとRDXの2 種類です。LTO に関しては、最新のLTO8が 2017 年10 月に発表されました。非圧縮時最大容量は12TB、最大転送レートは毎秒360MB です。また、RDX はDATの代替製品として開発されたシステムで、サーバーに接続したドッキングステーションにハードディスク等を内蔵したカートリッジを差し替えて使用します。POWER8から採用され、システムバックアップに適した装置として注目されています。IBM i には、BRMS(Backup Recovery and Media Services)というメディア管理とデータ保護のツールもあります。この一部として提供されるIBM i 独自の仮想テープ装置機能によるデータ保護の方法も浸透し始めています。この機能でバックアップをすると、仮想のテープを、イメージファイルとして作成されます。イメージファイルなので、外部へのFTP 転送も可能になりますが、重複排除の機能はありません。Data Domainの誇るテクノロジー
――そのような中で、Dell EMC Data DomainがIBM iの理想的なバックアップ環境として注目されるようになった理由は何でしょうか。 岡田 Dell EMC Data Domainの最大の特徴は、バックアップするデータを重複排除することにより、保管するデータ量を極限まで減らし、データを安全かつ確実に復旧できる仕組みを提供している点です。その独自のテクノロジーで、特許を取得しています。 企業が所有するデータ量が爆発的に増えている今日、複数世代にわたるバックアップデータをすべて保管しようとすれば、大きなデータストレージが必要になり、保管コストも急騰します。そこで、バックアップの世界では、保管するデータ量をいかに減らしつつ、確実に復元できる仕組みを構築できるかで各社がしのぎを削っているのです。 Dell EMCが誇る重複排除の仕組みとは、次のようなものです。例えば、バックアップするデータを1軒の家に見立てた場合、家を丸ごと保管するには、大きなスペースが必要です。しかし、家をよく見ると、柱や壁、屋根など、共通のブロックが何度も使われています。ならば、そのブロックごとのデータと、全体の設計図書だけを保管しておけば、家は元通りに復元できるはずです。このコンセプトに従ってデータの重複を徹底的に排除し、保管するデータ量を極限まで小さくできるのが、Dell EMCのテクノロジーです。
Data Domain 最新情報
――Dell EMC Data Domainの最新情報について、お聞かせ願えますでしょうか。 岡田 Dell EMC Data Domainはこれまでも、IBM iのコマンドでダイレクトにデータをバックアップし、重複排除を活用しながらデータロスを防ぐ仕組みを確立してきました。最近のキーワードは、クラウド活用です。IBM iからData Domainに格納したバックアップデータを、Vault領域を経由してAWSやAzureなどのクラウド環境に長期保管するソリューションが既に利用可能です。システムを復元する際は、その逆にクラウドからVault領域にマッピングし、VTLを含むActive層に戻します。これらはすべてDell EMC Data Domain内で実現します。データ量の増加に応じてディスク容量を増やすだけでなく、クラウド活用も選択肢の一部となりました。 また、IBM iはもちろん、それ以外のシステムが混在する環境でも利用できる、統合型のバックアップソリューションにもご利用いただけます。更にDell EMCのデータ保護ソリューションを活用することで、様々なファイルサーバーや仮想環境、物理的なサーバーのほか、データベースやクライアントPCなどから直接バックアップを取ることも可能です。今後、こうした統合型のバックアップ環境へのニーズは増えると予想しています。
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