最初の一歩【前編】
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Power Virtual Serverの東京リージョンがサービス開始してから1年半が経過し、本格検討されているお客様もますます増えています。
また昨年には待望のVPNaaSも利用開始となり、これまでネックだった通信関連の費用負担も軽減され、今後ますます多くのお客様でIBM i の移行先の選択肢の一つとしてPower Virtual Serverが検討されていくのではと思われます。
とはいえ、Power Virtual Serverってざっくりいくらくらいかかるの?どんなものを用意しなくてはいけないの?考慮点は何?どんな用途で使えるの?等々、お悩みの方もまだまだいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、こんな疑問にお答えしつつ、なるべく平易な言葉で、Power Virtual Serverの基本について前後編で解説いたします。この記事を読み終えるころには、自社でPower Virtual Serverを検討される場合に費用の算出根拠が理解できるようになることを目的にしていきたいと思います。(もちろんちゃんとしたお見積りはお取引のIBM販売店にお問い合わせください。)
一歩を踏み出す前に:
そもそもなぜIBM iをクラウドにもっていくの?
最近はテレビ・コマーシャルでも、「××はクラウドにおまかせ」など、「クラウド」という言葉を耳にしない日はありません。一方で自分が入社する前からそこにあるAS/400がクラウドで動く?というのにピンとこないかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
実際のところ、AS/400の後継者問題などから運用の負担軽減を目指してIBM i のクラウド化を検討される方が多いようです。また、従来からある「IBM i クラウド」≒IBM iお預かりサービスと異なり、IBM Power Virtual Serverは使った分だけの時間課金となりますので、経理処理上資産を増やしたくないという目的だけでなく、経費削減をされたいお客様にも好評のようです。
▲図表1
一方で、やはり企業の基幹データを社外に持ち出すのはどうか、といったセキュリティ面の理由でクラウド化をためらわれる傾向があるのは、企業の根幹をなす基幹業務を担うIBM i だからこその悩みかもしれません。また費用面でも5年以上使うのであれば、意外とオンプレの方が安いかもという試算結果もあります。ここは単純に見えるコストだけを比較するのではなく、クラウド化することによる運用の手間削減や電気代や設置費用も込みで評価をするべきでしょう。
加えてもう一つ気を付けなければいけないのは、IBM i で多数流通しているISVソリューションをお使いのケースです。
多くのISVソリューションではライセンスの使用許諾をハードウェアのシリアル番号で管理されているものも多く流通しています。Power Virtual Serverではシリアル固定も可能なのですが、シリアル固定に設定するとサーバー冗長のようなクラウドのメリットを享受できない場合がありますので注意が必要です。また、現在お使いのIBM i のOSクラスがP05であった場合、Power Virtual ServerはP10になりますので、ライセンス料が値上げになってしまうケースもあるようです。ただし最近はクラウド対応をされているソリューションも増えていますので、一度ご利用中のソリューションの提供社に確認されることをお勧めいたします。
第0歩:Power Virtual Serverの構成要素をざっくり理解する
さてそれでは本題のIBM Power Virtual Serverについて解説していきたいと思います。 Power Virtual Serverにはいろいろなオプションがありますので、これからそれぞれについて説明をしていきますが、その構成要素を超ざっくり以下のように分けてみます。
▲図表2
ちょっと大雑把すぎるかもしれませんが、今回は「基礎編」ということでご容赦ください。 これからPower Virtual Serverを検討する際に必要になってくる要素を以下の4つに分けてご説明いたします。
-
Power Virtual Server
いわずと知れたIBM Power本体です。国内では東京と大阪に設置されています。 -
ICOS
IBM Cloud Object Storageの略です。電子タバコではありません。 - IBM Cloud (X.86)
IBM Cloudサービスには、当然IBM Powerだけではなく、x.86系のサーバーも利用可能です。「IBM i を使うのに、x.86が関係あるの?」あるんです! - ネットワーク
Power Cloudヘは当然ネットワーク経由での接続になるわけですが、それにもいろいろな方法があります。
これらの4つの要素について、次からひとつひとつ解説してまいります。
第1歩:Power Virtual Serverの本体はどんな仕様でいくらなの?
まずは本丸のPower Virtual Server本体からご説明します。
▲図表3
まず本体は東京と大阪のデータセンターにあり、スケールアウトモデルのS922とエンタープライズモデルのE980が選択可能です。
CPUは最低0.25コアから、
- Dedicated(占有):CPUを1.0とか2.0などの整数単位で占有。一番高価なオプションです。
- Shared(共有):設定したコア数の2倍までベストエフォートで0.25コア単位で動的に自動拡張可能
- Capped(制限付き共有):設定したコア数から動的に変更不可
また、メモリーは2GB以上、モデル別上限まで拡張が可能です。ただし64GBを超えた場合は追加加算が発生します。
ストレージはTier1=NVMe、あるいはTier3=SSDのいずれかから選択が可能で、Tier3のSSDの方が安価なオプションとなっています。パフォーマンス値はNVMe:10 IOPS/GB、SSD:3 IOPS/GBと言われていますので、ディスクレスポンスが気になる場合は、パフォーマンス分析などによるサイジングをお勧めします。
OSはIBM i の場合V7R2以降が選択可能で、クラウド側でIBM iやAIXのストックイメージを利用することができます。LinuxはBYOL(Bring Your Own License)によるイメージ持ち込みのみ利用可能です。その他IBM i の関連ライセンスもOS月額料金に含まれますが、WebQueryやRational Developer for i 、IBM i Cloud Storage Solution (CS4i)、Power HAなどは別料金となりますのでご注意ください。
必要なものはほぼそろっているかに見えますが、いくつかの注意事項があります。
- V.24回線はサポートがありません。もしJCA通信やFAX通信などをご利用の場合は代替手段をご検討ください。
- テープ装置はありません。外部記憶媒体へのバックアップ手段は別途検討が必要です。詳しくは次項「第2歩:ICOS」をご参照ください。
- OSは初期導入時の一次言語は英語環境(2924)となります。一次言語で日本語環境が必要な場合は別途作業が必要です。
では、このPower Virtual Serverは月額いくらくらいかかるのでしょうか?実は誰でも簡単に試算することができるのです!
詳しくはこちらの動画をご覧ください。
「Power Virtual Serverの構成見積りについて」
第2歩:タバコは吸いませんが、ICOSって必要なの?
くだらない冗談はさておき、IBM Cloud Object Storage、略してICOSとはなんでしょうか?ググるとIBMのサイトでは「柔軟でコスト効率がよく拡張性の高い非構造化データ向けのクラウド・ストレージです。」と記載があります。先に説明のあったPower Virtual ServerでもストレージはNVMeかSSDが選択可能だったし、IBM i だから“非構造化データ”なんて関係ないよな?と思いがちですが、これはIBM iにとっての外部テープ装置の代替手段だとお考え下さい。
本体に万が一のことがあった時の備えとして外部記憶媒体にバックアップを保管しておくのはクラウドでも同じこと、その場合は、ぜひ「IBM Cloud Storage Solution for i (略してCS4i)」というソフトウェアを使ってこのICOSにバックアップを保管してください。
CS4iはPower Virtual Serverの有料オプションとして選択可能です。
▲図表4
このCS4i とICOSを使ったバックアップ方法については、iWorld掲載記事「IBM Power Systems Virtual Server環境におけるバックアップ検証」も併せてお読みください。
https://ah109sxyjk.smartrelease.jp/column/product/ibm-power-systems-virtual-server_backup
さてこのICOSを構成見積りするにあたって、注意事項があります。
▲図表5
- Power Virtual Serverのネットワークから、直接ICOSへはルーティングされないため、間にX86の上に仮想サーバーを立てReverse Proxy経由での接続となります。そのためPower Virtual Server、ICOSの利用料金の他に、X86サーバーの利用料金も必要になります。Public接続でのICOS直接接続が可能となっておりますが、こちらはセキュリティ面での考慮が必要です。
- ICOSはIBMのサイトでは「毎月無料で25GBを利用できます」などの記載がありますが、実はData Retrieval=ICOSからの読み出しの容量単位でも課金がされます。バックアップ(ICOSへの書き出し)だけなら課金はされませんが、保管したものからデータ復元をする際に課金されるということになります。書き出し容量にもよりますが、前述のCS4iと併せて1TB数千円から5TB1万円くらいの規模感になります。
- (3) ICOSは実際の使用量課金です。事前に1TBや5TBとして設定して課金されるのではありませんので、月によって請求金額が変動することがあります。
Power Virtual Serverのバックアップ先として、昨年からはVTL(Virtual Tape Library)も利用可能になりました。iSCSI経由接続で従来のTape装置のように利用可能であり、別途X.86サーバーのセットアップも不要、従来のバックアップコマンドもそのまま流用可能と良いことづくめなのですが、月額料金が1TBから5万円強とかなり高額になっており、長期保存データはICOSにアーカイブ保存が推奨されています。
まだまだICOS優位の状況は変わらないかもしれません。
第3歩:Powerを使いたいのにX.86も必要なワケ?
Serverを利用する際には、その横にX.86サーバーが必要になるケースがいくつかあります。その用途は主に前述のProxyサーバーであったり、IBMクラウドとお客様サイトをつなぐVRA (Virtual Router Appliance) だったりしますので、詳細は次項でご説明いたします。1台のアプライアンス・サーバーでの利用料金は約2万円弱となります。
後編はいよいよクラウド検討時の最難関、ネットワーク接続に加えて、Power Virtual Serverのユースケース最右翼バックアップサーバーとしての利用の利点について解説いたします。
どうぞお楽しみに。
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